凄まじい科学文明の発展によって、五蘊(人間を構成している身体と心の要素)ことには意識、心、魂、といったものは、
今日では私たちの脳と大変深い関係があるということが知られています。
現代科学は、不思議な脳の機能を次々に解き明かしてくれますが、
奇妙なことには、解き明かしてくれればくれるほど、その脳から、心というものが遠のいていくように思えます。
このような誠に不可思議で深遠な世界の心理を、もしたった一言の言葉に凝縮帰納し表現するとすれば、それはなんという言葉になるのでしょうか?
もし、我々真言宗門人が一言で表現するとすれば、それこそはまさに『六大は無碍にして常に瑜伽、声字実相を顕し、一字に千里を含む、
そしてその本質実体は空の海なり』という、遠い千二百年も昔の宗祖大師の言葉と、その大師の御名(空海)の二文字につきるのではないでしょうか・・
著者は、宗祖大師を「時代の最先端思想家であり、最先端科学者」と捉え、「千二百年後の今日でも、なおその発想は最先端思考のものではないか。
遠い昔のこの宗祖の言葉を、今日の最先端の生命科学の言葉にリニューアルし、蘇らせることが出来ないものか?」と考えて、本書を著したという。
「大師の言葉に対する特異な不可思議の秘密世界を、「空」の発想と、色々なこの世のなぞを解き明かすと同時に世界の不思議を教えてくれる現代科学の発想とを融合して、
二十一世紀の現代に、宗祖の御名「空海」に蘇らせ表現し、逆にその御名「空の海」を通して世界の不思議の真理(声字の実相)を探ると同時に、
我々の日常の活動、儀式等を組み立ててみようという、現代版心経秘鍵の、エンターテイメント理論書の、一つの試み」として。
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多くの科学者が、自身の研究分野と仏教の発想の共通点をよく指摘しているが、それはそこに宇宙万物の共通の原理、
法則のようなものが潜んでいることを直感しているからではないか? として、
本書は逆に真言密教の立場から科学の分野へのアプローチを試みたとも言えるのではないか。かといって決して小難しい内容ではなく、
活字も大きく挿絵も豊富で、そこはまさに「エンターテイメント理論書」たる所以である。 |